文化人類学を学んだ著者らしく、第2章ではインドへフィールドワークへ行き、お店や家庭に入り込みインドカレーを食べたりインタビューしているのがほかのカレー本と違うところです。
なかでもおもしろいのが、日本で売られている「印度カレー」のルウを持っていき、日本式に作ってインド人に食べてもらうところ。感想は本書を読んでもらいたいのですが、カレーのルーツであるインドへ里帰りみたいな企画がおもしろい。
基本的にはインドには「カレー粉」や「カレールウ」なるものはなくて、料理の度にスパイスを粉末にし混ぜてその土地や家庭独自の味をつくっているのですね。
また、「カレーとは何か」というところにも言及していて、日本では「黄色くて辛くて、肉と野菜を煮込んだもの」と認識されているけど、インドでは「スパイスを使っていて汁気のあるもの」をカレーと認識しているようです。
また、後半では日本で広まったカレーのルーツをたどっています。
まず、インドや東南アジアの胡椒をはじめとするスパイスが陸路でヨーロッパに運ばれていて金や銀と同じくらい高価なものとして取引されていました。
そこで大航海時代に海路が開拓され、船で大量にヨーロッパに運ばれるようになりました。
当時、インドの覇権を握ったのがイギリスで、スパイスとともに料理ももたらされ、カレーも食されるようになりました。イギリスではインドのように毎回スパイスをブレンドするわけにもいかず、最初からブレンドされている「カレー粉」が誕生しましたが、詳しい資料が残っていないようです。
それが明治初期に日本がイギリスと交流する中で日本にも伝わったところから日本式カレーが発展しました。最初はイギリスの食品会社C&Bのカレー粉を輸入していましたが、日本でも研究しS&Bがカレー粉を売り出します。
また、日本カレーでおなじみの、タマネギ、ニンジン、ジャガイモは実は外国からもたらされたものであり、初期のカレーには登場しないのも驚きです。明治5年に発行された「西洋料理指南」という最古のカレーレシピでは、ネギとショウガとニンニクをバターで炒めて、水を加えて鶏やらカエル(!)などを入れ最後にカレー粉を加えていたようです。
それが明治30年代にはもうバリエーションが広がり、玉子カレー、海老カレー、蟹カレー、牡蠣カレーなどが家庭料理本で紹介されているから驚きです。
イギリスでは結局カレーが発展しなかったのも興味深いです。
日本人の、食に対する飽くなき探求心はどこから来るのでしょうね?
講談社学術文庫ということで少々高いですが、カレーに詳しくなるこの一冊です。